OJTを企業内で定着化させるためにはOJTがひとつのしくみとして機能していなければならない。OJTをしくみとして機能させることは簡単なようで非常に難しい。なぜなら、すぐに成果として表れることが少ないため、なかなか継続させることが困難となるからである。
私は、現在、中堅・中小建設業で導入が盛んになっているISO9000を若手技術者育成のしくみとして活用することを提案したい。なぜなら、ISOはシステム的に継続的に行っていくことが大前提だからである。
今回、ISO9001の要求項目別にOJTのポイントを解説してみる。
(規格要求事項は昨年末改訂されたJISQ9001:2000による)
(1)6.2.2 力量、認識及び教育・訓練
94年版と比較して大きく変更された2000年版の教育・訓練の要求事項はOJTの点で考慮すべき事項が多い。
a)製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
現場代理人などの技術者の能力要件を明確化しなければならない。これは施工管理技士などの資格を保持していることは言うまでもなく、作業所の総責任者としての品質、原価、工程、安全などに対する技術・知識・経験を有していることを証明するための能力要件(力量)を持っていなければならない。
b)必要な力量が持てるように教育・訓練し、又は他の処置をとる。
上記の必要な力量が持てるようになるためにはOJTも含めて教育・訓練計画の中に落とし込む必要がある。特に部門別教育・訓練計画は可能であれば個人別に落とし込むことがのぞましい。
c)教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。
OJTの中で難しいのは現場技術者の能力要件を客観的に評価することである。「○○君は躯体については理解しているが仕上げや設備についてはもう少しだ・・・。」などの技術的な評価を客観的な評価結果(チェックシートなど)にもとづいて指導対象者(現場技術者)にフィードバックし、能力向上の機会とすることが重要である。OFFJT(集合研修)についても同様に客観的な評価結果が求めれれる。
d)組織の要員が、自らの活動の持つ意味と重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らどうのように貢献できるかを認識することを確実にする。
ISOでは全社の年度品質目標を部門目標にブレイクダウン(下位目標への落とし込み)することを要求している。通常、部門目標はさらにプロジェクト目標へとブレイクダウンされていく。ここでは現場代理人が単にプロジェクト目標を達成するだけではなく、部門目標を子人レベルまでブレイクダウンすることが望まれる。
e)教育・訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)
ISO上はOFFJTの訓練記録のみを記録する場合が多い。ここではOJTも含めて訓練記録を取り、それをOJTカルテとして残していくことをお勧めする。OJTカルテは各技術者の個人別に工事履歴や取得資格、上記C)の評価結果を記載する。技術者の担当上司が現場の異動にともない替わっても、カルテにもとづき本人のレベルや技術的な不足点を補う形で指導できる。
(2)6.4 作業環境
ISOでは作業環境を物理的、社会的、心理的および環境的要因を含めた作業が行われる場の条件の集まりとしている。OJTの場合、労働安全衛生に関する全般的な指導機会として活用したい。
(3)7.1 製品実現の計画
ISO上の施工プロセスを管理するための施工品質計画書を作成するにあたり、その作成過程の中でOJTを行う場面は非常に多い。特に施工検討会を実施している企業の場合、検討会において設計図書の内容および現場踏査の結果をふまえた施工品質者計画書の作成を指導することがきわめて重要である。
(4)7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
現場は必ずしも発注者の設計書どおりの状態であるとは限らない。「図面と現況が異なる」「設計数量が実際と違う」などの相違が起こりうることであるので、現場踏査の段階からそのような相違点を書くにすることをOJT指導しなければならない。
(5)8.2.1 顧客満足
今回の2000年企画では顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受け止めているかについての情報を監視することを求めている。発注者による竣工検査での指摘事項を満足度のバロメータとしてOJT指導したい。
(6)8.2.2 内部監査
内部監査を単に監査として実施するのではなく、OJTの機会として捕らえ、形式に流れずに指導・育成の場面として活用していくことが重要である。
(7)8.2.4 製品の監査及び測定
施工プロジェクト内での各種の検査・試験がこれにあたり、適切な段階でのOJTの実施が重要となる。これは検査・試験実施後に指導者が事の善し悪しを教えても遅いからである。
(8)8.5.3 予防処置
現場内での想定される不適合に対する予防処置の立案から実施に向けての方法論をOJT指導していく。どのような現場でも最低1つは実施すべきと考える。
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