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建設経営セミナー


■『業績向上につながる人事制度』(2) 【第20号 平成14年1月28日発行】

3.インプットを期待水準とした人事制度

1)インプットとは?
 前回述べた通り、従来の人事制度は仕事へのインプットを中心に評価したものが多く見られました。しかし、最近ではインプットの中でも、年齢・勤続年数といった非常に客観的ではあるが属人的な“年功”から、“能力・資格”といったより仕事に近い項目を制度の中心に捉える人事制度が増えてきました。その主な理由は、
 (1)管理職ポストの不足
 (2)必要な能力の多様化
 (3)技術革新による旧来の知識・技術・技能の陳腐化(あるいは陳腐化の速度アップ)

従来は経験とともに知識・技術・技能が自然にアップしそれが業績アップに結びつくと考えられていたものが、上記の理由により必ずしも過去の経験が現在の業績アップにつながらないと考えられたのです。

2)能力主義人事制度
 能力主義人事制度とは、ある仕事があり、その仕事を満足するレベル(水準)で遂行する為に必要な能力を定義し、その能力レベルに報いることを考えた人事制度です。
 この制度は、必要な能力の整理をなすべき仕事と結びつけて整理することにより、企業の業績向上に貢献する人材に厚く処遇しようというものです。この能力主義人事制度を構築することにより、職能という仕事を軸とした会社としての共通の価値観をもつことができ、社員が自身の職能を開発することにより、社内での位置付け(職能資格)をあげることができ、会社も能力のある社員を重要なポストにつけることができるようになりました。
まさに“企業は人なり”を具現化したシステムということができるでしょう。
しかしそういった利点とあわせていくつかの企業では別の問題も発生してきました。
 (1)仕事と能力の関連付けが充分になされない場合、能力を上げることが必ずしも
   仕事の成果に結びつかない
 (2)企業にあった適切な職能資格数を設定しないと、年功序列的になってしまう
   (能力測定の形骸化)
 (3)成果はあげていないが能力があるため処遇を高くする必要がある。

以上の問題は構築したシステム自体の問題に帰するものと、経営環境とのミスマッチという問題に帰するものに分けて考えることができます。

 (1)については、システム設計時に自社の仕事が正確に把握できなかった恐れがあります。
そのため、自社社員に必要な職能の定義ができず、社員の能力開発が必ずしも業績向上に結びつかなかったのでしょう。あるいは、設計時には最適な職能設定だったが、技術や社会環境、経営環境の変化に対応した職能の改訂がなされなかったのでしょう。多くの企業ではこの様な現象が見られます。システム構築時に検討を重ねた職能要件書や人事考課票を大事にしすぎ改訂を怠った結果、システム自体が陳腐化してしまうのです。

 (2)については、システム設計の問題と考えられます。社員数と比べて多すぎる等級数を設定すると、各等級間での能力の差が少なくなるため上位等級への昇格条件を厳しく設定できなくなります。すると、全員が標準滞留年数で昇格することになり、実質年功序列と変わらなくなってしまいます。
 逆に、等級数を少なくしすぎた場合、同一等級内に能力が大きく違う社員が存在することになり、処遇の面で不公正なものとなりがちです。

 最近特に多いのは(3)ではないでしょうか。現在の経営環境を考えると、必ずしも能力の高い社員全てに能力に応じた仕事を配分できるとは限りません。例えば一流の管理能力をもった現場代理人が10人いても、現場が7つしかなく3人がそのサブに付かざるを得ないといった状況です。この様な場合でも、能力主義の人事制度では現場を持った10人とそのサブに回らざるを得なかった3人は同じ処遇をする必要があります。違う責任を持った社員を同じように遇するということが公平かどうかは検討するべきでしょう。
 逆に、成果に差がある社員に同じ処遇する(具体的には同じ賃金(給与・賞与)を支給する)余裕がある状態であれば、さほど不満は出ないでしょうが、充分に昇給・賞与原資を確保できない現在のような経営環境では、成果を出している社員への処遇を押さえられる結果になってしまいます。成果を出している社員ほど不満を持つようなシステム運用になってしまうのです。
 この様なことから、現在のような経営環境において能力主義、特に能力一本で組み立てた人事制度では逆境を乗り切ることが難しいといえます。


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