3)建設業における能力主義人事制度のよくある問題点
他業界より遅れているといわれることの多い建設業においても能力主義人事制度は導入段階から運用段階に入っている企業が多く見られます。ただ必ずしも狙いどおりに動いているとはいえない状況のようです。ここで建設業によく見られる能力主義人事制度がうまく動いていない点を見てみましょう。
(1)「あの部長は現場を任せれば天下一品なのだけど、部の運営がうまくできていない」
建設業の特徴的な仕事の進め方は、プロジェクト中心型ということでしょう。他業界であれば、マネージャは部下の日常の仕事を自分の目で継続して観察し、評価することが出来ます。部下の視点にたって言えば、上司であるマネジャー(部長・課長)の仕事を目にすることができ、マネジメントという仕事を体感することが出来ます。そのため“自分が部長になったらこうしよう”といった、自分なりのマネジメント感を築くことが出来るのです。
しかし、建設業ではプロジェクト中心の仕事の進め方なので、部下は上司のマネジメントを観察することが出来ません。また自分自身がすでにプロジェクトのマネジメントを行っているため、マネジメントができると考えてしまいがちなのです。しかし、期間限定のプロジェクトにおけるマネジメントと、継続性の在る部門に対するマネジメントでは根本的な違いがあるため、優れた現場代理人が部あるいは課を預かる立場になったときに、マネジャーとしての能力が欠如するという事態が多々発生してしまうのです。
建設業では現場代理人に要求されるマネジメント能力と部課長に要求されるマネジメント能力が似て非なるものであることが人事制度の中で十分に考慮されていないケースが多いのです。
(2)「彼は人事考課の点数は低いが、現場を任せるとしっかり利益をあげてくるんだ」
人事制度のもとで現場代理人クラスに期待する職能が決められています。当然現場代理人として必要な仕事から職能を定義したわけですから、それらの職能を満足していないと現場で利益を上げられないはずです。しかし、実際には期待した職能を満たしていなくても、他の現場代理人よりも多くの利益を上げてくる方がいるはずです。担当した現場の運不運を差し引いても、そういったケースがよく見られます。そういった方は、職人さんとの関係を保つのがうまかったり、部下に仕事を頼むのがうまかったりするものなのです。そのため、自分自身では何も出来なくても、その現場では必要な仕事が十分なされ、利益も上がっていくのです。
このような“キャラクター(人間性)”で仕事をしていく現場代理人は能力主義の人事制度では評価しにくいものなのです。キャラクターの善し悪しは定義するのが難しく、定義できないということはシステムの中には位置付けられないということにつながるからです。キャラクターを仕事のインプット項目の中心においているタイプの社員は、しっかりした制度があるほど能力主義人事制度の中では報われることはないでしょう。
4)逆境の時代に重視すべき項目
それでは現在の経営環境においてどのような項目を人事制度の中心に据えるべきなのでしょう。現在のように受注環境が厳しく思ったような利益が上げられない時代、変化が激しく経営にスピードが求められる時代には求められる人材像を固定化することは必ずしも得策ではありません。
受注をとるための決め手も以前とは変わってきていますし、自分自身では限界だと考えているコストダウンも更に追及していかないと経営を継続させることは困難です。受注・利益にかかわらずこれまでの考え方を捨ててあらたな受注強化・利益アップ策を検討しなくてはいけないのです。
今までのように過去を推し量って将来を推測することでは最適な成果に近づくことが出来なくってしまうのです。今日の延長線上に明日があるかの保証は無く、今日必要だった能力が明日必要とは限らないのです。 このような時代にはすべての活動をより“成果”に近いところから評価すべきです。営業マンであれば、より多くの受注を取っているか、あるいは受注を取るための新たな方策を考え出し受注を取っているか、現場代理人であれば原価を低減しているか、原価を下げるための工夫をしているかが評価されるようになるべきなのです。
“逆境の時代”を乗り切るのに必要なのは、“逆境”を乗り切る新たな取組み策を考え出し、実行し、成果を上げていく人材なのです。従って、雇用システムや労使関係等を考えると一足飛びには実現できないかもしれませんが、成果を出す人材であるかどうかを人事制度の中核にしていくことを考えないかぎり、経営を発展させることのみならず経営を維持していくことも難しくなると考えられます。
次号はアウトプットを期待水準とした人事制度を解説していきます。
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