■『建設業にフィットする人事制度の再構築』 〜建設業の現状を打破する〜
第1回「建設業の典型的な人事諸制度」 【第37号 平成15年7月10日発行】 |
| (株)日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント 塚田 武志 |
激しい市場構造の変化や建設市場の縮小、またそれを促進する要因としての国全体の構造変革が叫ばれる中、みなさまの会社の中でもさまざまな改革が進められていることと思います。その21世紀型の企業を目指した改革が成功するも失敗するもすべて社員の力であるといっても過言ではありません。社員の力を改革および業績向上に結集させるためには、メリハリのある処遇が実現できる人事制度の構築が不可欠です。企業変革を促進し業績回復を促し、ハイジャンプしていくための人事制度のあり方を解説していきます。
1.建設業の典型的な人事制度
建設業に限らずすべての産業、すべての企業において何らかの人事制度が存在します。明文化されているものもあれば経営者の裁量を中心としたもの、賃金の決定・支払方法だけを決めたものから教育まで含めたものとさまざまなものがあります。その中でも多くの建設業で共通パターンが見られるようです。
1)職能資格制度を採用している
職能資格制度とは、経営組織における各職務の難しさ、複雑さおよび責任の重さなどを判断基準とした資格区分(等級分け)を行い、各資格区分に該当する職能の内容と期待水準を明らかにした職能資格等級基準を設定し、この等級基準を基にした人事処遇を行う制度のことです。つまり、「企業は人なり」の理念に基づき、能力のある社員をいかに処遇するかを考えた制度であるということです。ただし、この「職能資格等級基準」を職掌(技術・営業・事務)ごとに設定している企業が意外に少なく、社員が理解できるようなものにはなっていないケースが目立ちます。
2)抽象的な考課項目が目立つ
職能資格ごとに考課表を分けている企業が多いようです。また「職能資格等級基準」を職掌ごとに設定している企業では、人事考課表もそれに従い職掌別に作成しています。
しかし、実態の職務を十分考慮して作成したはずの「職能要件書」の記述が非常に抽象的なものであったり、具体的であっても考課表に反映されていなかったりと、実際に考課するときに、「何を評価すればいいのか」「どの程度できていればいいのか」がわからないものが多いようです。
3)総合評価的運用
考課項目が抽象的であることも原因なのでしょうが、最終的に各社員の総合的なイメージと考課の総合点を見比べての調整に大きな比重が置かれているという企業も多くありました。制度は構築しているものの、「人事権は社長」という概念を拭い去ることが出来ずに、最終調整段階で経営者が全員の点数を付け直すことが当たり前になっているのです。
4)結果としての年功序列的な運用
能力主義の人事制度では、「発揮するチャンスの無かった能力考課項目の点数の付け方」が良く問題になります。このルール作りを間違えると保有能力主義になり仕事をしていない社員でも高い考課を得られるようになってしまいます。
また、資格等級の数を多くしてしまい、等級間の能力格差がほとんど無くなり、昇格要件がやさしいものになり、ほぼ全員が同時期に昇格してしまっているという企業もあります。
このように、年功序列を廃する目的で導入したであろう人事制度(多くは職能主義)が結果として、能力の有無がほとんど処遇に反映されない運用になっている企業が少なくありません。
5)賃金テーブルが青天井
等級ごとに賃金の支給額を定める方式として賃金テーブルを多くの企業が採用しています。本来、職能と処遇の適切な関係を定めるための賃金テーブルですが、上限の定められていない青天井のものでは、同一等級に長期滞留しても賃金が上がり続けるということになります。これでは、等級基準に見合った処遇を行うことはできません。
次回は経営環境と人事制度のパターン、建設業の人事制度の課題について説明します。
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