■『建設業にフィットする人事制度の再構築』 〜建設業の現状を打破する〜
第2回「経営環境による人事制度のパターンと課題」 【第38号 平成15年8月21日発行】 |
| (株)日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント 塚田 武志 |
2.経営環境と人事制度のパターン
人事制度は大別すると、属人的なものと仕事に焦点を当てたものに分類することができます。属人的なものの代表格は年功序列の人事制度や職能主義であり、仕事に焦点を当てたものが職務主義や成果主義の人事制度です。日本の企業の歴史を振り返ると、長期的に右肩上がりの経済が予測されている時代の年功序列の人事制度、競争時代の職能主義人事制度と、多少のタイムラグがあったにせよその時代のニーズにあった人事制度を取り入れてきました。それらを図1と比べると、経営環境が厳しくなるほど、属人的要素から成果に近いところへ、つまりインプットからアウトプットに中心が移ってきています。
図1

これらを整理すると、
1)右肩上がりの時代
要求されているものの変化が激しくなく、長期間にわたって積み上げていくものが尊重される時代です。従って、勤続年数や経験といった属人的要素を中心にした人事制度がマッチします。
2)競争の時代
他社よりも優れたものが要求される、より優れた能力をどのようにして身に付けるか、高い能力の社員をより多くそろえるかが問われる時代です。従って、職能主義の人事制度がマッチします。
3)縮小の時代
全体のパイが縮小し受注や利益が減少する時代です。従って原資を成果にあわせて配分するという成果主義の人事制度がマッチします。
4)混迷の時代
今までと同じこと、あるいは他社と同じことをやっていては生き残ることが出来ない、変革の時代です。従って、成果貢献と変革貢献を中心にした人事制度がマッチします。
3.建設業の実態(業界、個別企業)
建設投資は平成4年度の84兆円をピークに下降傾向が続いており、(財)建設経済研究所の予測によると平成13年度は65兆円とピーク時の約23%減となりました。また同予測では平成22年度(2010年)は53兆円と、バブル前の50兆円時代に戻るとされています。
このように、建設市場が長期縮小傾向にあるのは確実なことであると考えざるを得ません。また、入札契約適正化法の施行やさまざまな入札方式の実施、さらなる市場のコストダウン要求など、今までの業界の常識では対応しきれないほど監督官庁・市場の動きが激しくなっています。
このような業界・市場の動きの中で、各企業もギリギリのところで経営・雇用を維持されています。しかし、多くの企業が「耐える」ことにのみ力を注ぎ、必ずしも生き残るための方策を採っていないのが実情のようです。例えば、コストダウンへの取り組みが限界・協力会社にこれ以上無理は言えないといった工事部門の発言、仕事が無いからしょうがない・採算を気にしていたら仕事は取れないといった営業部門の発言、長年付き合った協力会社は切ることができないという経営者の声など、建設会社に働く方々が弱気になっています。これらは心情的には理解できるものの、そこであきらめてしまっては、「耐え続ける」こともいつかは限界がきます。そういった閉塞感が社内を支配している企業が多いのではないでしょうか。
4.建設業人事制度の課題
このように、建設業界は縮小の時代と混迷の時代を同時に迎えているといっても過言ではありません。またそこを生き抜くための各企業の方策が期待通りに実施されているとは言いがたいものがあります。
このような時代には前述のとおり、成果と変革を実現するための経営が求められ、人事制度も成果主義と変革貢献主義を全面に打ち出すことをめざすべきです。
つまり、下記の課題をクリアしていくことが、今後の建設業の人事制度再構築に不可欠になります。
1) 戦略課題設定・・・市場に受け入れられるための企業戦略の明確化
2) 戦略実現のための役割(階層・職掌)ごとの期待水準の明確化
3) 企業戦略(全社方針)と個人方針(目標)の密な連動
4) 期待の満足度と連動した処遇制度の設計
会社の方向性・あるべき姿を明確にし、その実現に向けて部門・社員に何をして欲しいか、またその貢献度合いによってどのように処遇していくか、このような視点を人事制度に盛り込んでいくことが、「現状を打破する」人事制度の構築のキーワードとなります。
次回は、経営課題に合わせたコンセプトとその選択方法をご説明します。
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