HOME建設経営セミナー > 第39号

建設経営セミナー


■『建設業にフィットする人事制度の再構築』 〜建設業の現状を打破する〜

  第3回「経営課題にフィットする人事制度」  【第39号 平成15年9月17日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント 塚田 武志

5.個別企業の経営課題にフィットする人事制度


 それではこの縮小・混迷の時代に適合した人事制度とはどのようなものでしょうか。これは、やはりそれぞれに企業の状況とあわせて考えていく必要があります。直面している時代環境は同じでも、企業の規模や事業エリアによる経営環境の違い、また企業の経営の状況などにより、これからの経営テーマとする内容が変わってくるため、当然人事制度のコンセプトもそれらにあわせて定める必要があります。すなわち個々の企業を考えると理想的な人事制度はひとつだけではなく、それぞれの企業の置かれた状態により、構築すべき人事制度は変わってくるといえうことです。例えば、一口に成果主義人事といっても、プロセス成果と業績成果のどちらに重点をおくべきかが違うでしょうし、例え業績成果を重視すべきとしても、求める業績が利益なのか出来高なのか、コスト圧縮率なのかなど、自社の重点方針により、その内容は大きく変わることになります。しかし現在の建設業が置かれた経営環境を考えると、構築すべき人事制度は下記の三つのパターンに絞られるのではないでしょうか。

モデル1:経営変革に貢献した社員を高く報いる人事制度=経営変革型
 利益体質の強化、コストマネジメントの推進、リニューアル事業への参入、自社標準単価の整備など今迄の仕事のやり方を放棄して新しい環境に対応するための変革が急がれる企業の場合、「プロセス成果:課題解決成果」を成果として重視する人事制度を構築してください。
 経営全般の変革課題を設定し、その進捗管理・評価を中心した変革に対する社員の動機付けを図る成果主義人事制度です。

モデル2:高業績者の行動特性を評価基準とする人事制度=人材育成型
 技術者の技術力の向上、管理職の組織マネジメント力の向上、最近有能な人材から辞めていく傾向があるなど、能力により処遇格差をつけたい企業あるいは明確な戦略・システムはあるがその浸透が課題となっている企業は「プロセス成果:行動特性」を成果として重視するモデルの人事制度を構築してください。
 高業績者の行動特性(コンピテンシー)を洗い出し、評価に結び付けた行動変革に対して動機付けを図る成果主義人事制度です。

モデル3:利益貢献した社員を高く報いる人事制度=業績貢献型
 単年度の利益確保、家族主義的な人事処遇からの脱皮など当面の利益の回復が急がれる企業は、「業績成果:付加価値」を成果として重視するモデルの人事制度を構築してください。筆者は、現在の多くの建設業はこのモデルの構築が急務と考えます。
 付加価値目標を設定し、企業内の価値観を付加価値に一元化してその目標達成度を賃金に反映させる成果主義人事制度です。

 この中でも、現在の建設企業に一番マッチする人事制度はモデル1の「経営変革型」とモデル3の「業績貢献型」の折衷タイプと言えます。多くの建設企業では、現在の縮小・混迷の時代を生き残るための的確な施策を実施しているとは言いがたいものがあります。すなわち、現状の戦略・システムを社員全員で忠実に動かすことを期待するモデル2では経営全体としての成果は望むべくもないですし、付加価値のみを追うモデル3ではすぐに限界がきてしまうのです。まず、生き残るための戦略を明確にし、実現に会社を上げて取組むことをサポートできる人事制度を構築すること、すなわち「現状の改新」を着実に遂行・評価できる人事制度が多くの建設企業にフィットする人事制度であるといえます。

<前へ 次へ>

目次へ戻る