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建設経営セミナー


■『建設業のリスクマネジメント』(1) 〜現場のリスク管理について〜
【第50号 平成16年9月14日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント 石原 勝信

建設業では現場業績の集合体が企業経営の売上・利益といったことに限りなく近いものとなっています。すなわち会社の経営に連鎖している現場を遂行することは運営ではなく、現場経営として考えなければなりません。そしてその経営は、施工の大部分を専門工事業者に下請負で任せ、品質管理・工程管理・安全衛生管理といった施工管理・予算管理・生産性管理などの原価管理、発注者・設計事務所対応、近隣をはじめとする周辺環境への管理などを実施し、求められる目標を達成しなければなりません。
今回から5回にわたり『建設業のリスクマネジメント』ということで、企業経営目標を達成するための現場リスク管理について考えていきたいと思います。

1. 建設現場を包囲するリスク

バブル最盛期の技術者一人当たりの生産性は2.0億〜3.0億と言われていましたが、建設投資の急激な減少によるコスト競争(現在はバブル当時の4割減というものもある)と物件の小規模化によって、現在ではその生産性を達成することは非常に厳しい状況になっています。同じ管理を必要とする現場を、現在では半分の人員で管理していかなければならないということです。
その反面、近年では近隣問題が現場の工程や原価に大きな影響を与えるなど、管理しなければならない対象が多くなってきています。

一昔前は、現場は管理の隙間を作らないことで、目標(利益・品質・納期など)達成に対する阻害要因となるトラブルを未然に防いでいましたが、現在は多くのリスクに包囲されトラブルへと発展してしまう可能性が高まった環境にあるといえます。

2. 現場におけるリスクの評価

「受験生が試験当日に普段と同じ方面のホームの電車に乗ったつもりが、違う時間帯のため反対方面の始発電車で、参考書を読んでいたため気付くのが遅れ、引き返したが遅刻で試験は受けられなかった」といったように、普段ではあまり問題視されないちょっとしたミスによって、今まで掛けてきた努力を無にしてしまったという、本人にとっては大変な損害となってしまった事例があります。
このような電車に乗るような普通の行動であっても、結果が悪くなる、トラブルになってしまう同じようなリスクが我々の日常の管理業務の中にあるということです。管理の希薄化や、当たり前すぎたための無防備、注目度の低さにより潜在化していたものがトラブルとして顕在化してきます。そして、そのリスクを見誤れば、トラブルによって生じたすべてを企業が負担することになります。
場合によっては、指名停止・営業停止といった企業経営に関わり、社会的な信用の損失に結びつくような損害となる場合も考えられます。

リスクとは、何かの活動が行われるときにトラブルが発生する危険を言います。『短期間の作業なので、安全設備を省略してコストを下げよう』などと、個人的な思いつきで仕事を進めてしまう事は、本来あってはなりません。法令遵守は確実に実施しなければならないことです。もし誤った行為で違法になり、トラブルに発展すれば処罰の対象になります。
何かをやるときに、危険を冒して行うのではなく、『やってはいけないこと』をやってしまう『やらなければならないこと』が行われないという行動の不確実性がリスクとなってトラブルを生むことになります。
多様な管理を行わなければならない中で、管理すべき対象が希薄化することによって生じるトラブルへの危険が現場のリスクであります。

図表

我々の建設現場でも、行動の不確実性が引起す損害の教訓から、やってはいけないこと、やらなければならないことを法律や要領、手順としてルール化がされてきました。現在の現場経営の環境では、厳しく設定された目標を達成するためにはひとつのミスが大きな障害となります。常に損害(ロスコストの発生・品質の欠落・工程阻害など)が発生しない様に、順法・業務規定・行動規定などを日常業務におけるリスクとして管理の対象に置き、対策を講じていかなければなりません。

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