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建設経営セミナー


■『建設業のリスクマネジメント』(4) 〜管理の対象に置くリスク II 〜
【第53号 平成16年12月15日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 経営コンサルタント 石原 勝信

4. 近隣対応におけるリスク管理

1)  着工前

トラブルに結びつく苦情が寄せられる多くの原因として、近隣住民への説明不足があげられます。近隣の生活環境を理解して、これからの工事を認めてもらうという気持ちでの取り組みが必要になります。この着工前の活動によって対応すべきリスクの大半が明確になってくると考えられます。

着工の挨拶

施工会社としての着工の挨拶と、現場の対応窓口を明確にするための訪問をします。
そして、近隣住民に関する情報を入手することが目的になります。

生活環境(赤ちゃんがいる、老夫婦の家庭、工場を経営している・・・)
工事への考え方(事業主と確執があり事業計画自体に反対、不満に思っていること・・・)
要望(他社施工の工事現場で困ったことや対応してもらったこと、計画上の配慮・・・)
施工に関る注意点(古い木造家屋、井戸がある、樹木が越境している・・・)

といったことを知ることにより、見えなかった管理の対象を把握することになります。
タオルと名刺を持って『よろしくお願いします』といった、ただの挨拶をすることでは、リスク管理をする上で不十分な活動になります。現場責任者がキチンと目的を意識し、見えないリスクを発見する気持ちで実行することが必要になります。

工事説明会

工事説明会は近隣に対して建物を完成するために、施工計画を説明し理解を求める場として機能しなければなりません。説明する施工計画は現場調査に基づいたもので、挨拶のときに仕入れた情報を加味し、仕事を進める条件(請負金額、工期など)に整合しているものとなっている必要があります。
工事の計画を単純に説明するのではなく、工事が与える近隣への影響を明確にし、現状で行える最善の方法として、施工の合意を取り付け納得してもらうために工事説明を充実させることが重要です。

近隣協定

工事が近隣に与える損害を回避するために、工事を進める上での約束事項を近隣住民と施工者が相互に合意するものです。近隣の『権利』を侵害せず『損害』を与えなければ、施工者の補償責任は生じないはずです。したがって協定書は、『迷惑』を起こさないための約束事ではなく、近隣への『損害』に結びつくことのない対策となっていることが重要になります。
一方からの押し付けにならず、施工者にとって実現が困難な事項は無いか良く見極めて、十分な話し合いによって相互合意となる努力を行って締結をするべきです。

管理の対象が不明確な近隣問題などは、以上のことを確実に実行することによって、さまざまな現場環境における管理すべき要素が明確になってくると思います。
2)  施工中

管理すべき要素が明確になってリスク対策が実践されていても、工事の進捗に伴い近隣などから工事進捗の阻害となるクレームが出てくることがあります。工事を進めていく上で当たり前と考えていることが、一歩仮囲いの外では『気になること』になってしまいます。工事を円滑に遂行するために施工中実行しなければならないことがあります。

変化していく作業所状況の解りやすい事前説明

工事を完成させることが請負者の義務でありますが、その過程において周辺環境へ『迷惑』をかけていることを十分理解をして『配慮』することが大切なことになります。

作業内容の週間予定表は時間帯を記入して、迷惑の内容を明確にする。
鉄骨工事などの大きな作業の変わり目などの時は直接説明を行ったほうが親切です。

近隣のために良かれと思って計画した内容でも、新しい作業が始まるときはどのように配慮しているかを事前に説明しておくことで効果が違ってきます。

近隣とのコミュニケーション

小さな不満でも積み重なるとクレームとなり作業所へ向けられます。近隣とのコミュニケーションを積極的にとることで、日々の作業で迷惑を掛けていることへの不満を蓄積させないことが目的になります。小さなことでも意見として聞いて『ご迷惑をかけています』と配慮の気持ちを表すことが出来ます。
コミュニケーションを図るための活動として、定期的な訪問挨拶・日常の挨拶(職員やガードマンによる)・工事現場周辺の環境保全(道路散水、ごみ清掃など)などが挙げられます。

5. まとめ 〜現場リスクマネジメントの実践〜

現場において、リスク管理の緩慢さから発生するトラブルによって企業は余分な負担を強いられています。リスク管理は、忙しさの理由から管理すべき対象として選別されずに個人ができる範囲だけの活動となっているのが現状と思われます。『やってはいけないこと』『やらなければならないこと』が現場経営の中で意識されずに行われ、他の現場でも同じようなトラブルが発生することになります。
経験の浅い技術者が現場を任される機会が多くなる中で、共有や伝承ということが不十分な状態で独自の考え・やり方が実行されてしまうということもリスクが拡大している要因になっているとも考えられます。

現場責任者は部下や協力会社に仕事そのものを任せて建物を完成させることから、『まさかこうなるとは・・・』『当たり前なこととして注意していなかった・・・』ということが発生しないように、管理対象を明確にし、確認できる仕組みをつくり、管理活動そのものが部下への教育とする、といったことをリスクマネジメントとして実践していく必要があります。そして結果を良化させる活動が共有化され、どこの現場でもトラブルが発生しない仕事のあり方を作り上げる活動が重要なことになってきます。
こなすことではなく、成果ある現場経営が行われる管理業務のポイントとして考えてみてください。

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