近年の公共工事のコスト縮減要求と工事量の減少傾向は、われわれ建設関係者に厳しい現実と将来を実感させるものです。バブル期には80兆円以上あった建設投資額は、2003年度には50兆円強と4割も減少し、企業の倒産・合併など業界再編が進むことが不可避の状況です。
このような環境の中で、建設各社はそれぞれに利益確保に向けた努力を重ねてはいるのですが、なかなか思わしい成果を上げることができないでいます。それは、建設産業の枠組みが変わってしまったにもかかわらず、これまでのやり方の延長線上の努力でしかないからにほかなりません。あたかも泥沼に足を取られながら深い方へ深い方へと、もがきながら進んでいくようなものです。
ここでは、建設企業の勝ち残りに不可欠な「必要利益確保のためのコストマネジメント」について、VEと原価企画に焦点を当てて話を進めて行こうと思います。

1. 建設産業とVE
「VE」という言葉は、建設産業ではすでに十分浸透したといえるでしょう。各社でもVE教育や取り組みが行われています。その一つの指標となるのが、(社)日本バリュー・エンジニアリング協会認定のVEリーダー(VEL)資格者の増加でしょう。1990年に始まったVEL認定制度は、98年以降急速に受験者が増え、2003年9月の時点では、累計で約33,000名の合格者を数えるまでになり、その7〜8割が建設関係者で占められています。しかし、こうしたVEへの期待と関心の高まりとは裏腹に、VEをどのように自社の経営に寄与させるかという点については、明確な方針がないというのが現実ではないでしょうか。

2. 「原価企画」〜製造業の強さの秘密
『原価企画』。建設関係者にとっては、これまでなじみのうすい言葉でした。しかし、わが国の製造業に目を移してみれば、かんばん方式やジャストインタイムなどの日本式生産方式と並んで、原価企画こそが製品競争力・価格競争力の秘密であることは常識です。原価企画を一言でいえば、「製品開発の初期段階からコストをつくり込むことによって、必要な利益を確実に確保する」となります。
原価企画の本家(わが国のVEの元祖でもある)であるトヨタや、その他の代表的なメーカーでは、上流段階でコストをつくり込むというごく当たり前に見えることを、全社で不断にやり続けているのです。一方、われわれ建設はどうでしょうか。一部の企業は別としても、ほとんどはKKDD(勘・経験・度胸・丼勘定)で工事をこなし、利益は終わってみなければわからないという状況が続いています。
新しい酒(枠組みの変化)には新しい器(新しいマネジメント)が必要なのです。
これまで原価企画は、製造業とは違って単品受注生産の建設業には向かないとも考えられていました。しかし、そうではありません。VEの理想的活用形態、あるいはVEをやり続けて行き着く先ともいえるのが原価企画なのです。VEを導入・活用しVE力を高めると同時に、原価企画の仕組みを取り入れて目標利益を全社一丸となって達成する。これこそが今求められているコストマネジメントの姿です。

3. 建設業における原価企画とは
建設業における原価企画は、利益管理そのものと考えたほうが理解しやすいでしょう。
これまでの建設業では、原価は「かかる」というものでした。つまり、型枠がいくら、コンクリートがいくら・・、だからこれだけ原価がかかるというというのです。これに対して、原価企画では原価は「かけるもの」(許容原価)に意識を変えます。必要利益(受注状況を加味して全社利益計画から決まる個々の案件から上げなければならない利益=企業内に共有化された必達目標)を確保するために、組織をあげて何としてもこの許容原価を実現するのです。その仕組みと実践が原価企画活動です。
詳しい内容は「原価企画の導入編」にゆずりますが、原価企画の推進には次の5つの要素が必要となります。(下図参照)
1. 利益計画の設定・全社共有化
2. 段階ごとの目標原価の設定と結果の確認(フェーズド・マネジメント)
3. ミニマムコストの構築
4. VE能力の発揮と組織的活動
5. 顧客基準によるコストデータの整備
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