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建設経営セミナー


■『建設業のコストマネジメント〜現状と進むべき道』(7)
   〜必要利益確保のためのコストマネジメント〜
【第68号 平成18年5月15日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
経営コンサルタント 宍戸 利彰

 今回から本連載の主眼である「建設業の原価企画」について説明してまいります。この機会にその威力とすばらしさの一端をぜひ感じとっていただきたいと思います。



1.建設業に原価はあるか?

 最初からとんでもない問いかけから始まりましたが、結論からいえば、「建設業には原価などない!」ということになります。以前、建設業への原価企画の適用研究の中で、製造業の専門家から指摘されたことですが、われわれにとってはいかにも痛いところをついています。原価企画を行っている製造業では、原価とは目標コストを達成するために、部品ひとつを調達する上でも、「かわいた雑巾をしぼる」努力の末に、ほぼ一義的に決まるものです。これに対して、われわれが通常「原価」と呼んでいるものは、建設業界の甘えやもたれ合いの構造が集約したものかもしれません。思惑、しがらみ、慣習、力関係など、さまざまな要因で水ぶくれしており、その場の状況と扱う人によって大幅に変化するのが「建設の原価」といえます。でもこれは、建設業では原価はまだまだ下がる、下げられるということを意味しています。
 これまで建設業界の原価の概念は次のようなものでした。

図-1 時代遅れの原価の概念
◆原価 + 利益 = 請負金 原価はプライスの積み上げ。利益は必要利益から固定的に決まる。結果として請負金が高くなり取れない
   あるいは、
◆請負金 − 原価 = 利益 たたかれた請負金から積み上げた原価を引くと、利益が少ない、あるいは赤字になってしまう


 原価企画では、原価に対する概念を図−2のように切りかえることが必要です。一見、図−1の言葉を変えて移行しただけのようですが、実は天と地ほどの違いがあります。全社員にこの意識の転換ができない限り、実現できないところが原価企画の難しさでもあります。この概念を理解する上で、戦略請負金の意味もよく考えてもらいたいのですが、さらに重要なことは許容原価を全社でつくり込む、その努力と能力が発揮できるかということです。そのためには、しっかりとした仕組みを構築し、業務に落とし込んで活動するとともに、システムを支える基盤を整備して行くことが必要となります。

図-2 原価企画における原価の概念
◆戦略請負金 − 必要利益 = 許容原価
・会社の力(技術力、創造力、提案力など)で決まる請負金
・受注状況を加味した全社利益計画から決まる必要利益
・その差である許容原価を、全社をあげてつくり込む



2.必要利益を願望から実現へ

 皆さんの会社では、必要利益あるいは案件ごとの利益目標をどうやって決めていますか。年度計画でグロスの利益目標額や目標粗利益率だけ決めているのでは論外ですが、案件ごとの目標をあらかじめ決めているとしても、結局は現場所長の努力に期待するだけになってはいないでしょうか。こんな目標など絵に描いた餅で、単なる願望でしかありません。
 原価企画では、経営計画から決まる必要利益を、経営層から営業、設計、技術、調達、工事の全関係者が必達目標として共有し、これを上流段階(受注前が絶対条件)でクリアするために持てる全組織力を結集します。つまり、受注時には利益を「確定」してしまうのです。無論、受注環境によっては、当該案件の初期利益目標を修正せざるを得ないこともあります。あるいは戦略的にどうしても必要な案件ならば赤字で受注することもありますが、やはり受注前にその額を確定します。そうすれば、全体目標からの不足分を他の案件でどのように吸収するか、的確な方策をたててタイムリーに実行することも可能になります。
 こうすることによって、目標は単なる願望、利益は結果という旧来の成り行き管理から脱却し、年間目標利益を確実に達成する本来の利益管理ができるのです。


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