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建設経営セミナー


■『建設業のコストマネジメント〜現状と進むべき道』(10)
   〜必要利益確保のためのコストマネジメント〜
【第71号 平成18年6月26日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
経営コンサルタント 宍戸 利彰

ミニマムコストの構築

 ミニマムコストの性格については前回かなり説明しました。ミニマムコストは、施工段階での利益回復率は原則ゼロを理想としている、つまり、入札時に赤字で受注した工事は特殊の事情がない限りそのまま赤字で終わることになるということは、すでにご理解できていると思います。この概念が社内に浸透するには、相当の覚悟を持って臨まなければなりません。ミニマムコストのつくり込みには、社内全部署の合意と価値観の共有化が不可欠であり、広い意味でのVE能力の発揮が勝負です。
 下図はミニマムコスト作成のための一つのモデルですが、社内全部門の専門家の知恵とノウハウが集結され、システマチックにミニマムコストがつくり込まれていることがわかります。

図 ミニマムコスト作成フロー
図 ミニマムコスト作成フロー



 ここまで原価企画の基本的な考え方と進め方を説明してきましたが、それでは実際の場で原価企画がどのように行われるかを、ある会社をモデルとしてみて見ましょう。どこにでもあるような建設会社が原価企画で変わってゆく様子を、事例を元に再構成したフィクションです。原価企画活動のCP(コストプラニング)の実際の場面で、どのようなことが起きるのかをよく味わって下さい。

 松村健二は40才、A県の中堅地場建設会社の建築工事課長になって丸3年になろうとしている。よく晴れ渡ったある朝、松村は会社に向かう車のなかで、今日予定されている原価企画会議のことを考えていた。
 「しかし、うちの会社もこの2年で本当に変わったな。現場からあがって課長になったときには、いったいこの会社はどうなるのだろうと思ったのに。受注は減る、利益は上がらない、社員は自分の給料は空から降ってくると思っている。まさにジリ貧を絵に描いたような状態だったからな・・・。」

 何とかしなければと感じていたそんな時期に、松村はホームページで見た「原価企画」という言葉に興味を覚えた。セミナーに参加して原価企画の内容を知るにしたがって、まさにこれこそが自分が探していたものだと確信するようになり、会社のイントラネットを使って直接経営会議に原価企画の導入を提案したのが2年前だった。
 その後、幹部への説明やプレゼンを経て社長のゴーサインが出てからは忙しかった。コンサルタントへの依頼、プロジェクトチームの立ち上げ、導入計画の策定など、自分が事務局を任されて、最初の半年は瞬く間に過ぎていった。

 一番抵抗が大きかったのは社員の意識だった。会社では、創立者である先代の時代からの古株の幹部や所長が実権を握っており、建設会社にとっての古きよき時代の考え方がすべてという社風であった。営業は工事をとるのが仕事、利益は工事で出す、所長がすべてを決めて行く、利益は終わってみなければわからないという状況がずっと続いていたのである。そんな中で、工事課長の仕事はただ社内調整と数字の整理だけだった。「こんなことで、会社という組織である意味があるのだろうか。」というのが松村の疑問だった。しかし、コンサルタントの指導を受けるうち、こうした悪しき慣習や古いやり方を打ち壊し、新しい時代に適合できる会社に生まれ変わることが原価企画の本当の目的ではないかと思うようになったのである。
 導入以来約2年が経ち、今では2ヶ月に1度コンサルタントのチェック指導を受ける程度で、ほとんど自分たちで活動ができるようになってきている。それとともに、若手からベテランまで社員が生き生きとして仕事をしている様子が目に見えるようになり、昨年度からは厳しい中でもなんとか利益計画が達成できるようになった。

 「うん、確かにうちの会社は、すっかり変わった!」
 そんなことを頭に浮かべているうちに20分ほどで車は会社の門を入った。


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