建設業界は、市場の縮小と質的変化に伴い、急速な再編と淘汰を経験しつつあります。この大きな波に飲み込まれることなく、新時代に生き残りさらに発展する企業となるための具体的な方法論を「原価企画」としてご紹介してきました。「建設経営に太い背骨をつくれ」ということで今回は建設企業経営に必要な変化について思うところを述べたいと思います。

1.現象対処の経営から大局観に基づく経営へ
われわれは、どうも本質的な問題解決を先送りすることが好きな国民のようです。
九州の小学校で心が凍りつくような事件がおきました。事件の真相は別として、事件後数日経ってからの新聞に、「多くの自治体などで学校へのカッターナイフ持込禁止を検討している」という内容の記事が掲載されました。さすがに、記事の最後に識者のコメントとして、「それでは解決にならない。カッターナイフに代わるものがでてくるだけだ」とあったのがせめてもの救いでした。どうしてわれわれはこのような現象を裏返しただけの対処(多くの場合、問題解決には的はずれです)を考えてしまいがちなのでしょうか。同じようなことは、憲法問題や年金問題など国政レベルから個人の生活レベルにいたるまで、枚挙にいとまがありません。
これは、われわれ日本人特有(ではないかもしれませんが)な性向のようです。
当然のごとく、企業経営でも同様なことが日々行われています。例えば、工事量減少に伴い、緊急避難的に「リストラという名の人減らし」に走ることなどは、まさにこれに当たるのではないでしょうか。リストラだけでは、時代が逆転でもしない限り、いくらも経たないうちにまた一段のリストラが必要になるでしょう。さらに、早期退職を募れば優秀な人材が先に流出する傾向が強いですから、まさに負のスパイラルまっさかさまです。
経営者の役割は、自社の将来ビジョンを描くこと、そして、そのビジョンを実現するための道筋を社員に明確に示し、社員とともに希望と意欲を持って必要な行動をとることに尽きます。
ビジョンを描くということは、自社の現状とあるべき姿の差としての問題を定義することであり、後段は、全力でその解決を図ることにほかなりません。今こそ、現状対処の右往左往型の経営から、大局観に基づいてゴールに向かい着実に進む経営に転換するときです。

2.キーワードは「技術」と「経営」
国土交通省(旧建設省)は10年以上も前に、「技術と経営に優れた会社が生き残ればよい」との姿勢を明確に打ち出しています。「技術」、「経営」とも非常に意味の広い言葉です。もう少し建設の現状に即して、批判を恐れずここでの意味を特定化すれば、次のようになるのではないでしょうか。
| 「技術」 : |
顧客や発注者の期待も含んだ要求事項に対して、機能とコストの両面から効果的な提案ができること(VE契約制度、総合評価落札方式などへの対応力) |
| 「経営」 : |
他社に優るコスト競争力により、低価格でも適正な利益を上げられること(かつ、過大な負債がないこと) |
これらは、必要な機能を最低のコストで確実に達成できる、達成する会社であるということです。つまり、VEの定義とも完全に一致しています。コストと無関係な技術はありませんし、技術的裏付けのないコスト低減もありません。両者をバランスよく達成できる会社こそが、時代が必要としている会社にほかならないのです。
限られたパイを確保することにのみ汲々としているのでは、企業として社会の評価を得ることはできません。本業である工事施工から適正な利益を創出することは、企業としての最低条件です。それ以上のことができる、すなわち社会から高い評価を得られる会社になるために、今何をすべきかを徹底的に考えなければならないときにきているのです。
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