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建設経営セミナー


■『建設業のコストマネジメント〜現状と進むべき道』(13)
   〜必要利益確保のためのコストマネジメント〜
【第74号 平成18年8月28日発行】
(株)日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所
経営コンサルタント 宍戸 利彰

1.「人は城」〜建設企業は人がつくる

 原価企画を「必要利益確保のためのコストマネジメント」として紹介してまいりました。そのため、どちらかというとコスト低減に論点が偏ってしまったきらいがあります。しかし、利益目標を達成する活動を通して、そこで働く社員の意識と企業の風土を積極的に変えて行くことこそ、原価企画本来の目的であるといえるでしょう。確認のために、もう一度原価企画と企業の変革の関係図を示します。(下図)


図 原価企画と企業の変革(人を変える、会社を変える)


 「人は城 人は石垣 人は堀 なさけは味方 あだは敵なり」というのは有名な武田節の一節です。武田信玄にとっての城は、まさに武田家という組織集団であり、事態の変化に対応して変幻自在に組織の力を発揮できたからこそ、永く外敵の侵入を許さなかったのです。

 工場や生産設備を持つ製造業とは違い、建設企業はこれといった固定資産はありません。われわれにとっての資産とは、そこに働く社員がすべてといってよいでしょう。まさに「人は城」です。いわゆるマニュアル人間では、マニュアル作成時に想定した以外の事態には対応できません。変化の時代には、自分の頭で考え行動する人間が必要です。かといって、それが勝手な行動では組織は成り立ちません。大胆かつ挑戦的であるとともに、それらが目的、行動基準、ルールといった共有化された価値観にもとづくものでなければならないのです。



2.普遍的行動基準と変化への対応

 国土交通省からISOを入札参加要件からはずすという方針が出ました。その途端、これまで横並びで認証維持に励んできた建設企業の中には、維持をやめると言い出す会社が続出しているようです。これは、国交省の意図が企業に正確に理解されてないことが大きな原因ですが、根本的には、世の中の動向に流されて右往左往する体質が染み込んでいるからです。

 VEなどの管理技術が盛んな製造業でも、新しい理論が出ると飛びつき、それがうまく行かなかったり経営者が変わったりすると、またほかの理論に全社を挙げて取り組むということを繰り返す会社があります。

 その対極にあるのがトヨタです。トヨタは、40年以上前にVEを導入して以来、連綿とトヨタ流VEをやり続け、原価企画という形に進化させてきました。好調な業績を続けるトヨタの秘密を知ろうと、さまざまな「トヨタ式経営」に関する本も出されています。しかし、トヨタの生産方式などを表面的に取り入れた会社でうまく行ったという話を聞くことは、けだし稀です。トヨタの成功の秘密は、現在成功を収めている形にあるのではなく、工場従業員一人ひとりまで浸透した徹底的な改善風土こそが、トヨタ式経営だからなのです。

 顧客優先、目的思考、現状否定、創造性重視、価値向上。これらVEを表す言葉は、決して真新しい言葉ではありません。企業にとっては、普遍的なもので当たり前のことであるはずです。ところが、当たり前のことを当たり前にすることがいかに難しいことか。
 それを可能にするのが、VEという体系的な考え方であり、その活動を全社で普遍的な行動基準としてもつことです。
 そして、その努力の積み重ねを経営の中に体現するのが、原価企画活動なのです。



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