経営者の大半は社員への教育方法をいつも模索している。ところが社員がその気にならない、すなわち自ら学ぼうとする意欲を持っていないことがある。生きた教育を構築しないからである。ここで実務に役立つ、生きた教育のあり方を考えてみよう。
建築(民間)と土木(公共)の利益創出方法を比べてみると、建築は取極によるコスト管理力、合理化工法等の施工改善、VE変更提案交渉力が大きなポイントである。一方、土木では現場代理人の段取りミス、変更金額が予算削除でもらえない、施工トラブルの対応が後手に回って原価増大になっていくなど人的な要素がポイントになっている。
建築と土木の利益創出方法を同一レベルと見なしてコストダウンを実施しても効果は期待できない。ここに気づくことで、どのように現場代理人教育をするかが見えてくる。
土木の場合、コスト管理(コスト意識をもたせ、実行予算による出面、材料ロス、機械台数をチェックさせ早く施工完了するための一連の現場運営)は施工能力を一定以上有した人を前提としている。ところが経験の浅い人やその工種に慣れていない人を放ったらかしにしていることが多い。まずは施工力をつけることが土木では利益確保の第一歩である。
教育方法はまず、利益が予定より大幅に減少した現場を徹底的に分析して、その原因を明らかにすることにある。
ある企業の事例を紹介しよう。工事用道路の仮設が甘く、雨のため通行不能で余分な支出が200万円かかった。また、掘削土に岩盤や玉石が出るようになり作業が2週間延びたにもかかわらず変更金額は150万円の支出に対して30万円ということもあった。原因は事前の施工検討で十分議論していないことや、社内的な協力・支援体制が機能しなかったことである。このような現状から教育必要点を見つけて教育をスタートさせた。

| (1) |
段取り施工力不足・・・現場を中心としたコスト管理の実施と、社内ベテラン上司の体験から施工勉強会で施工チェック方法をしっかり身につけさせた。 |
 |
| (2) |
トラブル対応不足・・・トラブルは施工そのもの以外にも発注者、近隣、下請などの人的トラブルも含む。解決方法や対応知識(法律や折衝テクニック)を社内で話し合い共有化したことが有効であった。 |
| (3) |
変更・追加工事の代金未回収・・・追加・変更で支出が増えた分は、利益のない工種を減額して、工事金額のプラスマイナスゼロの相殺に持っていった。変更後の利益だけでも増やすことを心がけた。また、発注者への変更金額交渉は会社の営業・社長を含めた会議を開いて早目に回収方法を検討した。 |
建築の場合は専門工事会社に一式で施工することが多い。現場代理人は各職種の調整や施主・設計事務所への提案や交渉が主となる。実行予算をもとに外注予算を決めていく駆け引きやしたたかさを身につけていく。また、施主の建物への要望をいかに施工に反映させるかの仕組みを作り、その引継ぎや確認方法を教育していく。これらがコストダウン施工や有利な変更提案に結びつくことになる。施工技術に関しては各職種の作業を分析する教育をすることが効果的である。
例えば、鉄筋工事の結束作業は全体作業の30%もない。鉄筋を吊り上げたり、小運搬したり、配置したりすることに労務が使われる。とすれば、要領よく運搬、配置するロット割りや揚重機(施工範囲全てを網羅するタワークレーンの設置)計画を立てることで作業コストは安くなる。これらが生きた教育になり、自分の役割や責任、そして施工への関心・興味に結びついていくのである。このような実質的な利益創出の教育と平行してCPD(継続的能力開発)教育を計画する必要がある。CPDをひと言で説明すれば、技術者の専門的能力の修得状況を単位に換算して登録する仕組みである。大手ゼネコン各社は相互に連携してCPDを教育制度づくりに生かそうとしている。土木の場合に最適なのが全国土木施工管理技士会連合会のCPDS(この団体だけがシステムのSを付けて、継続学習制度と呼んでいる)である。一例を示すと、まず技術者は個人登録をして、社内の研修カリキュラムや毎月の現場代理人検討会の教育内容を申請する。実施したらそれらの勉強会内容を記録して、出席者の顔がわかるように写真を提出する。1時間の研修や勉強会は1ポイントが目安である。教育項目は施工技術、管理手法、提案力、倫理など幅広い。この他発注者にVE提案したり、論文を提出したりすれば10ポイント加算される。望ましい水準は年間30ポイント、5年間で150ポイントである。これは品確法のガイドラインに明示されている。
(詳細はホームページ http://www.ejcm.or.jp/index2.html 参照)。
今後は教育の実施が企業評価の一つの指標になっているという認識を持っていただきたい。
|