前回は教育のあり方を解説してきた。その中で施工の事前検討は社内のノウハウや社員の能力を磨くのに効果的であることを強調してきた。今回はその検討会の具体的方法を紹介してみよう。

現場代理人は工事を通して様々なリスクと背中合わせで仕事をしている。場当り的な対応をしていると、いつのまにか大損害を被ったり会社の信用を失くしたりして企業存続の危機に窮することになる。そこで、現場代理人が事前に現場で起こりうることを意識してそれにうまく対処する訓練を施工検討の場で取り入れることをお勧めしたい。
まず、(1)施工フローの項目立てをする。次に(2)その場面でどんなリスク要素(起こりうること)があるかを想定する。(3)そのリスクが発生した場合の現場の影響を利益、工程、品質、安全に分けて予想する。(4)そのリスクの発生頻度から打つべき対策を事前に考える。という検討の進め方である。河川堤防の改修工事を例に取ってみよう。
(1)着工前・準備工において、(2)立退く予定の民家が遅れたら仮設工事に着手できない。(3)工程が大幅に遅れ、河川が増水する頃に締切工事をすることになり、安全対策費が大幅増となる。(4)今のところ80%予定時期に立ち退くので大丈夫とのことだが、万一、立退きが遅れたとき、工期延長の了解をもらえるだろう。だが、安全対策費の増額は満額認めてもらえないだろう。施工中の作業記録と折衝が利益確保に重要である。といった検討内容になる。大半の建設企業では施工検討会と称してこれらのことはしているが、検討して終わりになっている。すなわち、その後のフォローや確認、指導が工事部門で実施されていないのである。
前回も利益消失の原因としてこの部分を指摘したが、毎月の工事進捗報告会議や毎週の工程会議において、事前検討したこれらのリスク要素を一つ一つチェックして、事が重大になる前に対策を講じる用心深さが重要なのである。これを認識していないことが結局、施工の信頼を失くし現場運営が後手に回る原因となるのである。社内にはベテランやその工種に得意な人がいるものであり、これらの人を活用する会議や打ち合わせ、勉強会を教育という枠に入れ込むことが経営手腕である。次にどのような対象を教育として取り入れるかを述べてみよう。
1.請負契約の設計図書、工事条件
どこに何をつくるか、間違いがあったらどうするか。工期、工事品質、お金(利益)、工事評価にどれだけ影響するか。VE、変更提案の有無、現地すり合せなど発注者ニーズへの事前確認をしたか。不特定要素(ex.地質、湧水、他)がある場合、どこまで変更可能かを事前にチェックしたか。→発注者へのコミュニケーション(聞き出し)能力が大切である。
2.施工法検討と予算管理(着工前)
数量確認と調達において特殊材料かどうか。専門会社への見積依頼、材料ロス率と単価など見積時点との食い違いや予期せぬ材料不足、納期不足にいかに対処するか。→初めての工種や経験不足の仕事に対する事前知識をいかに勉強するかがポイントである。
また、「これが最適だ!!」と自分で納得できるまで施工方法を検討する時間と協力者はいるのか。自分一人で全て決定する場合は、周囲に聞きに回って少しでも自分の自信のない工種をつぶしておくことが大切である。変更提案や下請作業のチェックについても、その着眼点を勉強しておくことだ。
3.施工中
施工中の事故(安全)、工事トラブル(材料届いてない!クレーンが間に合わない、etc)、環境への配慮(産廃問題、アスベストetc)、近隣からの苦情(騒音、振動etc)や嫌がらせ、関連業者の倒産、自然災害(大雨、台風、大雪・・・)、発注者からの突然の要望(「○○をサービスでうまくやってくれ!」「××書類を至急作成してくれ!」etc)、工事搬入路の突然の変更や利用中止(「このルートを通るな!」)への想定訓練をすることだ。
4.完成から引渡し、メンテ
瑕疵に関連したやり直しや無償でメンテをしてくれ、というような予期せぬ費用追加が生じることもある。→社内の手順や保証体制をしっかりつくっておくこと。これを事前に施主へ説明しておく(民間工事)。役所工事は、工事検査にパスして80 点以上の工事評点をもらえるように研究しておくこと。
今後は小さな対策や努力をきめ細かくすることで利益確保しなければならない。そのスタンスを自覚できない工事部門では退化していくだけである。
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